古市憲寿『だから日本はズレている』紹介と感想

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 社会学者であり作家の古市憲寿さんの『だから日本はズレている』を紹介します。今では各種メディアで大活躍の古市さんですが、当時29歳だった2014年に書かれた1冊です。社会ではどうしても「世代」を意識した世論が形成されますが、古市さんより上の世代である「おじさん」世代の影響について、20代であった若者視点、そして社会学者の視点でわかりやすくそしてユーモアたっぷりに書かれています。

 若い方々は共感しながら読めることが多いでしょうし、「おじさん」世代の方々はそんな若者の視点を認識するうえで役立つはずです。

こんな人におすすめ

 本書は若者の視点と社会学者の視点を持った古市さんが痛烈な皮肉を交えながら日本社会の弱点をどんどん切り込んでいきます。特におじさん世代への批判や皮肉は厳しく、そして鋭い視点でこう語っています。

 「おじさん」とは、いくつかの幸運が重なり、既得権益に仲間入りすることができ、その恩恵を疑うことなく毎日を過ごしている人のことである。
 かつては男性でありさえすれば、多くの人が「おじさん」になることができた。高度成長期やバブル期など、経済成長が続いていた日本では企業社会が積極的に若者たちに対してその門戸を開いていたからである。

『だから日本はズレている』p.234~235

 ただ単に上の世代への反発をするだけでなく、社会的な背景も加味しながら批判を述べているように感じます。もともと「おじさん」的な思考や行動が苦手だった人はきっと共感できることも多いはずです。そのため、次の様な人にはとても楽しめる内容なのではないでしょうか。

こんな人におすすめ
  • 努力を押し付けられることが嫌いな人
  • 現実的な考え方が好きな人

努力を押し付けられることが嫌いな人

 高度成長期やバブル期の日本は歴史的にも例がないほど豊かに成長を続けていたため、本当の意味で「努力すれば夢がかなう」時代でした。「おじさん」たちはその時代にみんなで団結して一生懸命に働いていたので、「努力すれば夢がかなう」ことを経験として知っています。
 しかし、バブル崩壊以降に生まれた若者は成長できていない社会でしか生活をしたことがないわけですから、「おじさん」たちに「努力すれば夢がかなう」と努力の素晴らしさを語られてもそれが全く伝わってきません。ここに世代間のずれが生じているのですが、「おじさん」たちは既に聞く耳をもたなくなってしまい、努力を説き続けて若者に離れられていくという現象が続いています。

 「努力が足りない」と言われて自信をなくして落ち込んでいる若い方がいたら、ぜひこの本を読んで客観的な視点を身につけてほしいと思います。

現実的な考え方が好きな人

 本書では現実のデータをもとに、現在の若者についても論じています。「おじさん」への批判や鈍化した経済成長について考えると、若者はみんながみんな絶望しているように思ってしまいますが、当時の20代の78.4%が「現在の生活に満足している」と回答していることを挙げています。
 また、社会変革についても起業やデモなどの様な目立った行動ではなく、シェアハウスで慎ましく暮らすことなど、自分にできることをすることで社会と関わっている若者にも触れています。
 インパクトに欠けるためにあまり知られていないのですが、若い世代は既に「おじさん」たちを気にせずに幸せに生きていく方法を見出しているようです。

 大げさに夢を語るよりも現実的な視点の方が、目立ちはしませんが希望を持つことができるように感じました。

最後に

 非常に現実的な視点で展開されていく本書は、逆に言うと今まで素直に努力を続けてきている人には心地良い内容ではないかもしれません。
 もちろんそれはそれで一つの生き方で否定されるべきではありません。ここでは客観的な視点がおもしろおかしく述べられている、そんな気持ちで一読するととても学びがあるのかなと思いました。

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