読書が好きだと公言すると「どんな本を読むのか」「最近は何を読んでるのか」という会話になることがあります。そんな時に自己啓発のベストセラーだったり、おすすめの自己啓発本を聞かれることが多くありますが、僕はあまり自己啓発書を読んだことがありません。正確に言うとおすすめされて読んでみたことは何度もあるのですが、だいたい最後まで読み切らずに挫折してしまっているのです。
表現しづらい感想なのですが、自己啓発しようとして本を読むのではなくて、本を読んだら結果的に自己啓発されていたというのが本質な気がしています。そのため今回は自己啓発が苦手な人におすすめを10冊紹介しようと思います。共感してくれる人もきっといるはず、ぜひ参考にしてみてください。
おすすめ10冊
順番はランキングではありません。
10選は個人的な感想を判断基準にしているのでご参考までにどうぞ。
①残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法/橘玲
自己啓発本の多くは「やればできる」という論調で読み手の努力を促しますが、そんな風潮に違和感を抱いた著者が「やってもできない」という前提を提唱します。「やってもできない」。だが、そのうえでどの様にこの残酷な世界で生き延びていけば良いのか、それを具体的に模索していく本。納得感の高い現実的な考えが好みです。
②下流志向/内田樹
「つべこべ言わずに働こう」と思うようになる1冊。若者が学びや労働から逃走するようになっていることを示唆し、自ら無知で怠惰になっていく下流志向を丁寧に考察、そして批判しています。人類学から経済学まで幅広く考察しながら教育と労働の本質的意義を模索し、そしてその大切さを身に染みるほどわからせてくれる辛辣な1冊。「やりたいことが見つからない」「自分に合った仕事は何か」確かにそれも大切なことかもしれませんが、それは学びや労働の本質とはずれているようです。
③あなたの人生の科学/デイヴィット・ブルックス
人づきあいの上手なハロルドと上昇志向の強いエリカ。二人の誕生前から老後までの物語をベースに人間がどの様な意思決定をして人生を歩むのか物語の構成で書かれた1冊。最新の脳科学や心理学の知見をもとに語られたライフプランは本当の意味で私たちの人生の参考になる内容ばかり。科学的ではありますが人間味のあるドラマも満載で大感動します。
④銃・病原菌・鉄/ジャレド・ダイヤモンド
世界的ベストセラーでもあり、朝日新聞が行った「ゼロ年代の50冊」という特集では第1位となった人類史を考察した壮大な1冊。本書では西欧人が文明を繁栄させたのは優れた知性ではなく、地形や文化をはじめとした環境が要因であると主張しています。この価値観を持つことでむやみやたらに自身を鼓舞するような啓発はしなくなるはずです。新たな人類史の読み物としてもおすすめ。
⑤イビサ/村上龍
精神を病んだ女性マチコが出会った男に誘われて会社を辞め、ヨーロッパへ旅立つという物語。自分と向かい合う旅を実践した女性の話で「自分とは何か」がテーマとなっている破滅的な小説です。何処かにたどり着けば答えがある、というような安易なことは現実世界では起こり得ません。自分と向き合うことの難しさを痛感させてくれる辛辣な1冊。旅の描写はもちろんとっても面白いです。
⑥大衆の反逆/オルテガ・イ・ガゼット
1930年に書かれた大衆批判の古典。他人と同じであることを苦痛と感じるどころか快感に感じ、自発的に他人と同じように振る舞う人々のことをオルテガは「大衆」と読んでいます。大衆が多く生まれたことで社会がどうなったかは現代史の通り。現代においてオルテガが発したメッセージは更に辛辣に響くように思います。
⑦経営者の条件/P.F.ドラッカー
ビジネス書の古典。タイトルに経営者とあるが本書は一般の社員向けに書かれたもので、社員ひとりひとりが経営者の様に働くことが大切と説いた本。仕事においていかにして成果をあげるべきかを学習することができます。適職診断や自分探しをするより身近にある仕事の大切さをわからせてくれるはず。
⑧カンブリア宮殿 村上龍×経済人 社長の金言
現在も絶賛放送中、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「カンブリア宮殿」の書籍化文庫版。毎週一つの会社の代表がゲストとして密着取材を受け、スタジオでは村上龍がインタビューを行います。ネガティブな現象をピックアップして不安を煽るようなメディアとは一線を画し、この番組では日本社会のポジティブな側面を丁寧な取材から具体的に紹介してくれています。サブタイトルに「社長の金言」とありますが、中身を読むと簡単に真似できないことばかり書かれているため、安易な自己啓発としては役に立ちません。先人たちの圧倒的な努力自分自身と比べてみて大いに絶望してみること、そしてその言葉に打ちのめされてもまずは温めておけばよさそうです。冒頭で村上龍が、いつか大きな目標を見つけた時にその絶望が希望に変わるはずだ、と書いてくれています。
⑨肩をすくめるアトラス/アイン・ランド
アメリカ大陸横断鉄道の経営をする会社で優秀な人材が次々と退職・失踪してしまう事態が生じるミステリー調の小説。一方で既成のものに群がる「たかり屋」が権利だけを訴えて利益を得ている現実世界が描かれます。優秀な人材ほど消えていってしまう世界の行く末は…。本書は思想小説家として知られるアイン・ランドの最高傑作で、聖書の次にアメリカ人へ影響を与えた本として知られています。これを読むことで自分は社会に対して価値のあるものを提供できているかを真剣に考えるようになります。
⑩勝手に生きろ!/チャールズ・ブコウスキー
1940代のアメリカを舞台に、様々な職を転転としながら全米を放浪する労働者視点で描かれた作品。辛い境遇のなかでも主人公は「書くこと」を続け、酒を飲みながら日々を乗り切って力強く生きていきます。夢を見ながら空虚な日々を過ごすことよりも、日常を乗り切りながら自分の人生を歩み続けていく生き方の方が僕にとっては心地の良いもののようです。
最後に
自己啓発が苦手な人におすすめしたい本を10冊紹介しました。こうして並べてみると、少なくとも自己啓発書よりも長く読まれ得る本が多いことに気づきました。長く読まれる本には本質が書かれていることが多く、その本質は読んでいて心地が良いものではないかもしれませんが、人生において大いに役に立つはずです。
しっくりくる自己啓発書が見つからずにもやもやしている人は、ぜひ気になったものから手に取ってみてください。
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