ジンの歴史は面白い【前編】

ジン
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 クラフトビールは日本でも定着してきましたが、クラフトジンはまだあまり聞き慣れていない印象があります。ジンは手頃な価格で飲むことができる、世界中で愛されている香り豊かなお酒です。では、「クラフトジン」とは何か。

 明確な定義はないようですが、主に小規模な蒸留所で造られた個性的なジンが「クラフトジン」と呼ばれているようです。

 さて、将来的にクラフトジンは日本でも流行するのか。未来は誰にもわかりませんが、歴史を知ることで少し予想が立てやすくなります。

ジンの歴史

 ジンはもともと薬酒として飲まれていましたが、その後イギリスで安酒として貧困層に拡がり「ジングレイズ(狂気のジン時代)」と呼ばれる程社会問題の要因にもなってしまった悪名高いお酒でもあります。しかし20世紀以降はアメリカにも拡がり、ドライマティーニの様なカクテルやジントニックなど、華やかな飲み方で愛されるようになり見事復活を遂げます。

 そして21世紀になって更に進化を遂げようとしている新たな潮流がイギリス発祥の「クラフトジン」です。ジンそのものの歴史は深いものの、定着して流行をしはじめているのはここ数年のことかと思います。

 そのため今後の新しい情報を追いながら楽しむことができるのは、お酒を飲むことに加えて情報収集の楽しみも増えることになります。日本にはまだやってきたばかりで定着していませんが、今のうちに目をつけておくと流行を先取りできるかもしれません。

ジンの特徴

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ジンは熟成が不要

 ジンは同じ蒸留酒であるウイスキーに比べて長期熟成する工程が入らず、これは価格にも反映されて安く手に入る傾向があります。

 ウイスキーが価格高騰している背景もあり、今後蒸留酒の代表がジンに取って代わる可能性もなきにしもあらず、といったところでしょうか。もちろん「クラフトジン」となると手間がかかっているため、現時点ではまだ「安い」とまではいきません。しかし、そうはいっても数千円。高級酒にはなり得ないでしょう。

 糖質を控えるためにビールを避け、価格高騰のためウイスキーを諦め、そんななか手に取る洋酒が「クラフトジン」になる日がくるかもしれません。

ジンの基礎知識

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ジントニックとビール。ジンは蒸留酒でビールは醸造酒である。

 まず、ジンという酒の基礎知識を説明します。穀類を蒸留してできたアルコールにジュニパーベリーというボタニカル(草根木皮)で香りづけしたお酒を「ジン」と呼びます。

 基礎知識を理解するうえでポイントとなるのが蒸留の技術とジュニパーベリーです。そしてジンの発祥がイギリスではなくオランダにあったという歴史も重要なポイントです。

スピリッツ

 水の沸点は100℃でアルコールの沸点は78.3℃です。蒸留の技術を利用すればこの沸点の差を利用して水とアルコールを分離することができます。

 アルコールの沸点の方が低いので、加熱して先に出てくる蒸気を回収、冷却して液体にすればスピリッツと呼ばれる魔法の様なお酒の出来上がりです。

ジュニパーベリー

 ジンの起源は実はイギリスではなくオランダにあります。フランドル地方(現在のオランダとベルギー)では、スピリッツをジュニパーベリーで風味付けしたお酒を「ジュネヴァ」と呼んでいました。オランダ人はオランダ東インド会社の設立により、約3万人の社員を世界中に派遣していました。当時、命取りとなっていた壊血病の予防としてハーブと一緒に飲まれていたのが「ジュネヴァ」だったのです。
 「ジュネヴァ」はオランダ語で「ジュニパーベリー」を意味するもので、「ジュネヴァ」をイギリス人が英語化し、転じて「ジン」と呼ばれるようになりました。

 この流れを理解しておくと、「ジン」とは「スピリッツにジュニパーベリーで風味付けしたお酒」という基礎知識が覚えやすくなるかと思います。

ジン・グレイズ(オランダからイギリスへ)

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大航海時代は様々な文化を生むことに

 オランダで壊血病予防の薬用酒として飲まれていた「ジュネヴァ」ですが、その後イギリスへと拡まって「ジン・グレイズ(狂気のジン時代)」と呼ばれるほど社会に定着し、国民を堕落させる程に飲まれるようになります。

ロバート・ダドリー伯爵

ジンの起源は意外にもオランダ

 ジンをオランダからイギリスへ持ち込んだきっかけとなる人物がロバート・ダドリー伯爵です。

 1500年代にイングランド軍を率いてオランダへ出兵しました。その後も戦争は続き、その戦時中にイングランドの兵士たちはオランダで手に入れた「ジュネヴァ」を煽って戦いへの指揮を高めていたのです。

 そして、そのイギリス人たちはジュネヴァの味を覚えて本国イギリスへ持ち帰ることになります。これがイギリスへジンが持ち込まれた歴史のはじまりです。

17~18世紀のロンドン

産業革命はジンの普及にも大きな影響を与えた

 17~18世紀当時のロンドンは、まさに近代の夜明け前といった時代で、人口は過密で労働需要の増大、賃金は上昇して消費の欲望が少しばかり増えていた頃でした。

 そんな時代、1694年に当時も広く飲まれていたビールに重税がかけられることになりました。これによってジンの方が安いお酒になります。

 ジンへの需要が高まりますが、ジュネヴァのモルトの様な複雑な味わいはその辺の蒸留所には出せず、低品質の穀類とあらゆる材料を混ぜて価格競争に走るようになってしまいました。

 そして当時の労働者は貧しく、辛い労働とみすぼらしい生活を忘れるために安酒を飲むようになってしまいます。辛さを紛らわすことが目当ての消費者達は諸手を挙げて、低品質の安酒「ジン」を迎え入れてしまうかたちとなったのです。

 当時は「ジン・グレイズ(狂気のジン時代)」と呼ばれるほど、ジンで堕落するイギリス人が街に溢れかえってしまい、本来は薬酒だったジンが「不道徳な酒」という印象に変容してしまったのでした。

そしてアメリカへ

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 その後、ジンは更に世界中に広まるようになります。そのきっかけはアメリカでの流行にありました。

 次回はアメリカへ渡ったジンの歴史をご紹介します。ジンの歴史に大きな影響を与えたのは禁酒法です。

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後編はこちらから

ジンといえば日本ではジントニックが馴染みがありますね。

最後に

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参考文献

ジンの歴史 (「食」の図書館)/レスリー・ジェイコブズ・ソルモンソン

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