近年は海外文学などを多く読んでいましたが、かつては日本文学も多く読んでいました。先日NHKの「100分DE名著」にて三島由紀夫の金閣寺が取り上げられており、「そういえば日本文学もよく読んでたな」と思い、10冊選んでみようと思った次第です。
「純文学」「近代日本文学」など、カテゴライズの定義に迷いましたが、ひとまずゆるめで広義な線引きで選んでみたく、「日本文学」にしています。おすすめはたくさんありますが、今回は比較的有名な作品を多くまとめてみました。
おすすめの日本文学10選
※順番はランキングではありません。
※個人的な感想を判断基準にしているのでご参考までにどうぞ。
①金閣寺/三島由紀夫
三島由紀夫の代表作で日本近代文学のなかでも代表格である作品。実際に起きた金閣寺放火事件を題材にしており、美しさに憑りつかれた青年が金閣寺を放火するまでの経緯が語られていきます。主人公の溝口にとって金閣寺は圧倒的な美の象徴的存在でした。何故この様な行為に及んだのか、読み込んで考察する必要がある異常ながらも深みのある1冊。
②春琴抄/谷崎潤一郎
盲目の女性、春琴を丁稚(主人に奉公して雑用に従事する少年のこと)の佐助が献身的に仕えていく様を描いた中編小説。「丁稚が献身的に仕える」と言っても本作は究極のマゾヒズム的内容で、ある意味究極の愛が描かれていますが僕はその愛のかたちにひっくり返るくらい驚いて本作を読み終えました。非常に短い作品なので分厚い小説は読めないという方にも読み切れる分量なので入門に良いかもしれません。内容が異常なほど濃いので入門とは呼びにくいですが。
③堕落論/坂口安吾
太宰治と並んで「無頼派」と呼ばれた戦後文学の代表的作家、坂口安吾の代表作。1946年に掲載された作品集です。本来マイナスな意味合いで語られる「堕落」という言葉から、戦後社会の倫理観を逆説的に描いて人々の価値観をひっくり返してしまった社会への影響力も大きかった1冊。
④孤島の鬼/江戸川乱歩
江戸川乱歩の最高傑作と言われる長編小説。明智小五郎シリーズや『人間椅子』『芋虫』などの短編が有名かもしれませんが、僕にとって本作がベストオブベストです。
これほど面白く、そして怖い作品は他になかなかありません。
⑤走れメロス/太宰治
新潮文庫の短編作品集。学校の授業でも題材となっていることが多く「走れメロス」は誰もが知っている作品かもしれません。
僕はこの中の「女生徒」という、14歳の女生徒が読者に語り掛ける独白体の作品が大好きです。繊細な心情が語られているのですが、文章のリズムが心地よく引き込まれるように読み進めてしまいます。
⑥枯れ木灘/中上健次
中上健次の初長編作品であり代表作。中上はウィリアム・フォークナーに影響を受けた作家で熊野サーガと呼ばれる紀州熊野を舞台にした作品群を発表しています。
本作はその熊野サーガ第二編で(第一編は『岬』)日本文学の最高峰と呼ぶ人もいる名作中の名作。
⑦沈黙/遠藤周作
17世紀の史実を基にした日本におけるキリシタン弾圧を、ポルトガル人司祭の視点から描いた歴史小説。当時の日本で目を背けたくなるような迫害に苦しむなか「神の沈黙」という命題を問う傑作です。
⑧砂の女/安部公房
安部公房の代表作の一つ。砂丘にやってきた男が砂穴に閉じ込められてしまい脱出を試みる物語。変わった物語ですが非常に奥深く世界的にも多大な評価を受けています。人間はどんな状況下でも生きる意味を自身で見出していくものだと感じました。
⑨一千一秒物語/稲垣足穂
大正時代の作家、稲垣足穂の代表作品群。初めはファンタジックな文体で星を拾った話などが描かれますが、哲学的な内容に変容していく展開に驚きながらぐいぐいと読みました。若い頃に知人におすすめされて読んでみた思い出深い作品でもあります。
⑩限りなく透明に近いブルー/村上龍
村上龍のデビュー作であり芥川賞受賞作。当時最年少での受賞で今作を気に近代日本文学の代表的作家である村上龍の活動が始まります。その後多くの長編小説を執筆しますが、本作は福生の街で頽廃的な暮らしをしている若者が描かれています。
最後に
僕の好きな日本文学を10冊紹介しました。世界は広い!とよく思いますが、日本だけでもこれだけすごい作品がたくさんあると思うと、世の中はディープな魅力で溢れかえっていることに気づかされます。また次の機会には代表作だけでなく、もう少し凝った10選をお届けできればと思っています。
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