P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』紹介と感想

P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』紹介と感想P.F.ドラッカー
P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』紹介と感想
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 経営学の創始者であり、「経営の神様」や「マネジメントの父」と呼ばれるP.F.ドラッカーの『非営利組織の経営』を紹介します。
 本書はドラッカーが80歳の時に出版されたもので、非営利組織について書かれた世界で最初の本であるとも言われています。非営利組織と言うと日本ではNPOやボランティア活動のことを真っ先に思い浮かべるかと思いますが、ドラッカーの関心はいつも文明や社会の在り方にあるため非営利組織の運営マニュアルの様な内容ではなく、現代社会において企業以外の組織の役割がどんなところにあるのかを示してくれる古典的な存在となっています。

本書から学べる事

本書から学べる事
  • 非営利組織の社会的役割
  • 寄付を募るための心得
  • 企業との違い

 非営利組織について世界で初めて体系的に書かれた本ということもあり、非常に充実した内容となっています。ドラッカーの理念が各所に散りばめられているので、上記以外にも多く学べる事はありますが参考にしていただけますと幸いです。

非営利組織の社会的役割

 本書ではアメリカ社会において、企業や政府ではなく非営利組織がいかに社会において重要な役割を果たしてきたかを考察しながら、非営利組織のマネジメントに必要な戦略や思考法を学ぶことができます。日本で会社員として忙しく生活をしているとあまり実感として非営利組織の存在を意識することができず、どの様な活動をしていてどの様な貢献がされているのかイメージできない人も多いかと思います。しかし、日本でももともと寺の運営は非営利組織であったし、PTAでの活動も非営利組織の活動にあたります。そのほかにも貧困世帯の支援やアルコール依存症の患者団体など、企業や政府がアプローチできない社会問題に対しての成果をになっているのが非営利組織であり、その存在なくしては現代社会は成り立っていなかったと言っても過言ではありません。

 また、ドラッカーは多くの著名人との対話を通して、非営利組織においてどのように人を動かすのか、という洞察を深めています。賃金が発生しない活動だからこそ簡単には人が協力してくれず、人の価値観に訴えて社会活動を実施してもらわなければなりません。そのためには成果を明確にすることや、ひとりひとりに作業を与えるのではなく役割を与えるようにすることなど、具体的に役立つ考え方が次々と語られていきます。
 この様に「非営利組織だからこそ」人間と社会にとっての本質的なことを考える必要性が発生する、貴重なノウハウが詰まった古典的名著となっています。

寄付を募るための心得

 非営利組織の最大の特徴であり最大の課題は資金の集め方にあります。企業とは違って非営利組織は寄附者から資金を募って活動を行うからです。そして組織が成果を挙げるまでには時間もかかりますから、災害時の一時的な募金とは異なり継続的に寄付を募るための関係性づくりも非常に重要になってきます。
 その様に寄附を募って非営利組織として活動を続けていくためにはどの様に運営していけば良いか、そのためにはマーケティングが必要であり顧客にとって大事なことは何か、彼らの心を捉えるにはどうしたらよいかを考えなければならないとドラッカーは言っています。

 普段忙しい会社員として過ごしていると、NPOの活動やボランティア活動に対して活動者の善意で周っているというような甘い認識を持ってしまうかもしれませんが、本書を読むと「非営利だからこそ」より本質的なマネジメントが必要不可欠になるものだということが身に染みて理解することができるようになります。

企業との違い

 ドラッカーは非営利組織について、企業以上に成果を明確にすることが大切だと語っています。従業員に賃金が発生する企業の方が成果に責任を求められるように思うかもしれませんが、成果が出なかったことが自社の資金を失うことに繋がる企業に対して、非営利組織が成果を出せなかった場合に失うのものは寄付をしてくれた人の金です。
 したがって非営利組織は企業以上に、社会に与える成果を明確に説明できるようにしなければならないと説いています。ここでも「非営利だからこそ」成果に対して責任が重視されるということが強調され、僕にとっては仕事をするうえで「成果」というものをより広く意識することができるきっかけとなりました。

最後に

 世界で最初の非営利組織経営の本であり古典となった『非営利組織の経営』を紹介しました。
 最近では日本でも非営利組織での活動が多く見られるようになってきたように思います。この本を読むことでそういった活動に参加することを検討する人も多いのではないでしょうか。僕も実はNPOやボランティアで活動をしていたことがありましたし、現在も無理のない範囲で続けています。
 会社員として働くこととは異なる役割も感じますし、社会がどのように成り立っているかを考えるきっかけになったのも事実です。そして本書を読むことでその体感に理論と歴史が加わったので、より深い意義を感じることができるようになりました。
 この社会を生きていくうえで間違いなく役に立つ1冊です。ぜひ一度読んでみてほしいと思います。

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