鹿島茂『渋沢栄一』紹介と感想

※当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

ノンフィクション
鹿島茂『渋沢栄一』紹介と感想
スポンサーリンク

 資本主義の父と言われる渋沢栄一の生涯と思想を、フランス文学の専門家である鹿島茂氏が描いた壮大な伝記です。渋沢栄一の本は非常に多く書かれていますが、幕末から実業家を経て晩年の暮らしまで詳細に記されている大作となっています。渋沢栄一がどの様な時代にどの様な生涯を辿ったのかに興味がある人におすすめしたい一冊です。

本書で学べること

 非常に分厚い大著ではありますが彼の生涯を時系列を辿って学ぶことができ、尚且つ彼の思想の形成に影響を与えた出来事についても詳細に描かれている素晴らしい一冊だと思います。この本から学べる事を簡単にまとめてみましたので参考にしていただければ幸いです。

本書で学べること
  • 渋沢栄一の生涯
  • 富は卑しいものという考えからの脱却
  • フランスのサン=シモン主義と日本の資本主義のつながり
¥838 (2023/06/15 12:10時点 | Amazon調べ)
¥1,034 (2023/06/15 12:10時点 | Amazon調べ)

渋沢栄一の生涯

 本書は文庫本の上下巻を合わせて1000ページに渡る大著で、多くの時代に跨って活躍した偉人の生涯を時系列を追いながら読み進めることができます。渋沢自身が記した「雨夜譚」や「青淵回顧録」などから多くが引用されており、詳細な考察から真実味のある具体的なイメージができる内容となっています。
 また、本書の巻末には渋沢の生涯の年表が掲載されており、彼が設立に関わった企業を一覧として見ることができます。その数の多さにも驚きますが、現在も存在している企業が非常に多いことにも気づくかと思います。まさに日本資本主義の父であるということが、本書を読むことで理解できるはずです。

富は卑しいものという考えからの脱却

 渋沢が幼少期を過ごした日本には武士の精神が未だ根強く残っており、近代の資本主義の考え方が浸透しにくい世の中でした。そんな世の中で商人が生きていくうえで自分たちの仕事を誇ることは非常に難しく、日本の社会そのものを変革する必要があったのかもしれません。
 本書では若き渋沢が徳川体制に反発する時代から、フランス万博に派遣された経験を通して近代日本の発展に凄まじい貢献をしていく様が描かれています。実業家というと富を創出=金儲けというレッテルを通してイメージしてしまうことがあるかもしれませんが、渋沢の生涯と社会への貢献度を読み通すことによって、決して弱肉強食ではない節度のある人間らしい資本主義の在り方が理解できるようになっています。

フランスのサン=シモン主義と日本の資本主義のつながり

 あまり聞きなれない「サン=シモン主義」という思想が本書において非常に重要な役割を担っています。この思想についての詳細な定義などは本書をお読みいただければと思いますが、産業の発展に基礎を置いて社会を発展させていく考え方で、限られた富を均等に分配するのではなく富自体を大きくして社会全体で豊かになっていこうというものです。

 渋沢は日本資本主義の父とも呼ばれているので、その思想の元はイギリスかと勝手に思っていたのですが実はフランスからの影響だったんですね。パリ万博に派遣された経験を通してこの思想に触れたエピソードが非常に詳しく描かれています。これは著者の鹿島茂氏がフランス文学の専門家であることもあり、他の渋沢関連の本に比べて最大の特徴になっているかと思います。

最後に

新紙幣になることや大河ドラマで話題になっている渋沢栄一について、最近多くの書籍が出版されていますが、彼の生涯を時系列を辿って学ぶために本書はとても適しているかと思います。
 分厚さにひるんでしまうかもしれませんが、間違いなく面白くてタメになる内容なのでぜひ読んでみてください。

コメント