ミシェル・ウェルベック『プラットフォーム』の紹介と感想

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ミシェル・ウェルベック『プラットフォーム』の紹介と感想ミシェル・ウェルベック
ミシェル・ウェルベック『プラットフォーム』の紹介と感想
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 ミシェル・ウェルベックは1958年生まれのフランス人作家で、98年『素粒子』がベストセラーとなり、2010年『地図と領土』でフランスで最も権威のある文学賞であるゴンクール賞を受賞しました。
2015年にはイスラム教批判とも捉えられるスキャンダラスな小説『服従』が発売された日に、奇しくもシャルリー・エブド襲撃事件が起きたことで一挙に有名になりました。
 今作は長編だと3作目にあたり、こちらも2001年8月末に出版されたためNYの同時多発テロと重なりスキャンダラスな評価を得ることになってしまいました。悪態をつくような表現も多いために読者を選ぶ傾向はあるかもしれませんが、世界中にファンが多いのも事実なので共感できる読者も多いはずです。

あらすじ

「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」―圧倒的な虚無を抱えた「僕」は、父の死をきっかけに参加したタイへのツアーで出会った女性と恋におちる。パリへ帰国し、ふたりは売春ツアーを企画するが…。高度資本主義下の愛と性、そして絶望を描き、イスラームの脅威を見事に予言した、最もスキャンダラスな長編作。

プラットフォーム (河出文庫)

 父親を亡くし人生に虚無感を抱えた男が旅先のタイで出会った女性と売春ツアーを企画するという突飛なストーリーです。この物語から何が描かれていくのでしょうか。

虚無を抱えた男・厭世的な女

 主人公のミシェルは齢40で1年前に父親を亡くしており、いつも退屈しており人生に熱くなれず冷めた視点で日々暮らしています。そこで休暇をとって「観光事業」を利用した旅に出ることにしました。東洋的な魅力を持つ活気に満ちたタイを旅先に選ぶことにします。
 そして旅先のタイでヴァレリーという若い女性と出会い恋に落ちます。このヴァレリーは旅行会社に勤める美しい女性なのですが、現代社会そのものを強く嫌っている厭世的な価値観を持っています。

帰国後に売春ツアーを企画するという突飛なストーリーですが、人生において虚無を抱くミシェルと世の中を嫌うヴァレリーの視点で語られるこの物語は、現代を生きることの痛みや苦しみなど現実的な本質を描いているように思います。
 そしてこれだけスキャンダラスな内容でも多くの読者が存在しているのは、半端な夢物語では救いにならない現代に嫌気が差している人々が多くいるからなのかもしれません。

現代資本主義と愛と性

 今作も、ウェルベックの処女作である『闘争領域の拡大』と同様に、高度資本主義が発展し続け愛や性までもが競争に晒されていくことの絶望が描かれています。また、フランス社会と旅先である東洋の魅力がたっぷり詰まったタイの両国が描かれているため、西洋と東洋を対比させて世界を考えることもできます。
 人生に熱くなれない男と厭世的な女性が高度な資本主義を通して、どの様に人生と向き合っていくのかを、時には世の中への悪態を耳に挟みながら読み取っていくことができる作品です。

最後に

 今日も最後までお読みいただきありがとうございました。僕はウェルベックの作品の中でも本作が最も印象に残っている作品です。スキャンダラスな評価もあるため読者を選ぶ作品ではありますが、気にいってくれる人も多いと思います。

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