給料が低いのはあなたのせいではない

給料が低いのはあなたのせいではない雑記
給料が低いのはあなたのせいではない
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 2022年になり仕事はじめも一段落したところ、感染状況はまだまだ予断は許さないながらも経済活動は再開しようとしています。最近になってようやく「いせや」という東京都吉祥寺の老舗焼き鳥屋に再び行くことができて心から幸せに思っています。瓶ビールとシューマイが好きです。「いせや」の魅力は常連である詩人高田渡氏の「バーボンストリートブルース」という本に書かれています。気になる方はどうぞ。

 さて、経済活動が再開したのは良いのですが、僕の職場では退職者が相次いでいます。なんだか連鎖しているような感じで隔月くらいで誰か辞めているような…。退職した理由などを聞けていない身なのでいらぬ推測ばかりしてしまい何だか心が穏やかでいられません。自分がする仕事は変わらないわけだから目の前の仕事に熱中すれば良いのですが、何だか構造的な問題もあるように思ってしまいます。

 仮に退職者が増えた理由が職場の構造的な欠陥だったとしたら、そんな環境で貴重な人生の時間を会社に滅私奉公して費やすのはまっぴらごめんです。その時間を使って本を読みたいし焼き鳥屋に行きたい、自分の時間が無駄になってしまうのは辛いものです。もちろん仕事というのは価値ある営みですから、本質的には能動的に顧客と社会のために成果を上げつつ働きたいものです。

 しかし、視野は広く全体にも目を向けるべきです。そこで今回は小熊英二先生の「日本社会のしくみ」という本を読み返しながら、日本社会を生き抜いていく方法をもう一度考えてみようと思います。今年も来年もまた安心していせやで瓶ビールを飲むために、まずは勉強をしてこの社会を生き残る方法を模索していきます。

日本社会のしくみ

 社会学者で慶應義塾大学教授の小熊英二さんが2019年に出版した「日本社会のしくみ」という新書について、新書にも関わらず500ページ超の大作で、日本社会を形成した暗黙の習慣(本書ではこれを「しくみ」と呼びます)を膨大なデータをもとに解明するというものです。

 暗黙の習慣とは何かというと、学歴が重要な指標になっていること、学校名が重要になっていること(何を学んだかは重要でないとされる)、年齢や勤続年数が重要な指標になっていることなど、その他多数の重要な習慣を見ていきます。欧米との比較が非常にわかりやすかったのですが、採用慣行について、日本の企業は同じ会社でのタテの移動はしやすいが、欧米の企業は同職種でヨコの移動がしやすいというものです。

 日本人は同じ会社内で出世を目指しますが、欧米では同じ職種で別の会社へ転職してキャリアアップを図ります。採用という慣行についてもこういった文化が社会によって根付いていることを示し、更にそこから膨大なデータと歴史を紐解いて「日本社会のしくみ」を少しずつ解明していきます。500ページを超えるので骨の折れる読書になるかもしれませんが、これを読み終えると日本社会の構造的な特徴が見えてきます。

 僕はこの本を読んで日本社会のしくみが形成された流れと、現代の日本社会がどういった状況にあるか今までよりも鮮明に見えるようになりました。そして強く印象に残った学びは、労働者の給料(僕の給料も)というのは「会社側の都合と労働側の意見の落としどころで決まる」という事実でした。歴史とデータの分析によってこれを痛いほど理解することができます。

 この気づき以来、自分が成長することに対しては本質的な成長のみを意識し、会社からの評価とは分けて考えることができるようになりました。「会社にも都合がある」と一歩距離を置いて物事を考えられるようになりました。もちろん本書はより深く社会を分析しており、ここでいったことだけが主張ではありません。しかし構造を知ることで自分の大切な時間を守ることの役には立てるかと思います。

社会を変えるには

 小熊英二先生の本に「社会を変えるには」という名著があります。こちらは2011年の東日本大震災の後に出版され、大きな話題を呼びました。

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 社会学の観点から社会を変えることについて分析したものです。この時は原発問題に言及しながらも「社会を変える」という少し広い範囲での社会学を展開していました。

 今回取り上げた「日本社会のしくみ」では雇用・教育・福祉により詳細な分析を割いているため、極めて現実的な文化が暴きだされています。それは前作に比べて、「知った現実に対して個人に何ができるか」ということを考えると絶望してしまうような内容です…。とはいえその絶望に対し、小熊先生はいくつか提案を出しながらも最後にこう問いかけてくれてます。

「学者は事実や歴史を検証し、可能な選択肢を示して、議論を提起することはできる。しかし最終的な選択は、社会の人々自身にしか下せないのだ」

「日本社会のしくみ」P.580

 社会に対して個人でできることは少ないですが、それでも我々が議論をして選択していくしかないようですね。

「日本社会のしくみ」を学んでどう生きていくか

 冒頭で話した僕の職場の退職者について考えてみます。退職した同僚達は少なくとも僕よりも献身的な人付き合いをしていたように見えます。そして一生懸命で素直でした。その一方でしっかりと言われたことを実行していた印象が強いです。これは良くも悪くもですが、僕から見て悪く感じたのは無思考無批判で仕事を遂行する時があったように感じます。根拠が「上からの指示だから」なんですね。

 その様な仕事の積み重ねを続けると、作業が機械化していきます。作業が機械化すると想像力が失われて豊かな働き方ができなくなります。そうすると細かいミスが目立ってしまい、そのミスも上から指摘されるのではないかという不安が生み出されます。こうしてより保守的な姿勢になり、活き活きと働くことはできなくなるでしょう。

 やはり全体を構造として理解してから働くことは自分を守ることに繋がるように感じます。何も言わずに一生懸命頑張ってくれる部下の方が上司からしたらありがたい存在なんでしょうけど。僕はそんなのは嫌なのでひねくれていると言われようが、素直じゃないとか生意気だとか言われようが、能動的に頭を使いながら活き活きと、そして決して搾取はされないよう仕事を遂行しようと思います。

 とはいえ生き残るのは大変ですね…。僕も正直なところ無思考で機械的に働いて一日を終えたいことはよくあります。もっと楽して豊かな時間を手に入れたいものですが、そのあたりは今後も考えながら、ひとまず心身ともに活き活き働くしか今はなさそうです。それではまたしばらく頑張っていきましょうね。お読みいただきありがとうございました。

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