どうすれば豊かになれるのか。『「豊かさ」の誕生』から考える。

どうすれば豊かになれるのか。『「豊かさ」の誕生』から考える。経済学
どうすれば豊かになれるのか。『「豊かさ」の誕生』から考える。
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先日書いた「2021年に読んだ本・おすすめ5冊【経済読み物編】」の中でも少しだけ紹介した『「豊かさ」の誕生』という本について書きたいと思います。
本書の初版は2015年なので昨年に読んだ僕はだいぶ時代から遅れて読み終えたわけです。しかしそこを気にする必要はありませんでした。この本が与えてくれた学びは長く役に立つものだったからです。要するにめちゃくちゃ面白かったということですが、今から読んでみても充分に楽しむことができる良作なのでまだ読んでない方にはぜひ手に取ってみていただきたいと思っています。

『「豊かさ」の誕生』の知見をどう活かすのか

はじめに断っておくと、本書を読むことで個人が豊かになれるとかそういった話では残念ながらありません。そういった手法があるとすれば誰も会社員という手段を選んでいないでしょう。本書が分析する「豊かさ」の誕生と増大は圧倒的な幅広い歴史的視座に基づくもので、豊富なデータと共に繫栄に成功した国が何故成功したのかを社会学や経済学の視点から読み取っていくというものです。この学びは個人のノウハウとしての即効性はありませんが、個人の人生観には骨太の指針を提供してくれるものであり心強い精神的支柱にもなり得るでしょう。

もし慢性的な安月給に悩みながら倹約を続けるしかないような暮らしをしている場合は、「繁栄」や「豊かさ」という言葉はあまりピンとこないかもしれません。少なくとも僕はそういった日々を過ごしていますし多くの現代日本人も同じような状況かと思います。僕の職場の若い新入社員からも将来の夢や希望よりも「どうせ給料はあがらない」という諦念や「生き残れない」といった不安の声の方が多く聞こえます。こういった声から停滞する経済状況と超少子高齢化社会の悲観的な未来予測は、現在の個人の仕事や日常生活にも暗い影響をボディブローの様に与え続けていることがよくわかります。

確かにそういった現実は現実かもしれませんが、それでは人生が終始ネガティブなものになってつまらないものになってしまいませんか。そこでこの本を読んで少しでも前向きになってほしいです。本書を読むことを通して、少なくとも歴史的に見ると現代人がいかに豊かで恵まれた状況にあるのか、そしてそれは未来永劫継続することが可能であるという楽観的な未来像を得ることができます。そして、視点を変えて世界の経済発展を歴史的な視座で見てみることが、まるで違った世界観を見せてくれるという学びも得ることができます。まず大切なことは知識を吸収することで既存の閉塞的な世界観を抜け出すことです。現代社会の暗い側面だけではなく現代社会に生まれた利点にこそ焦点をあてて、そこから自分の生き方を考えるようにしたいものです。

『「豊かさ」の誕生』が与えてくれる基本的な学びと新しい視点

本書の著者は投資理論家であり歴史研究家でもあるウィリアム・バーンスタイン氏です。本書は現在文庫版で手に入れることが可能で、上巻では主に国が繫栄する絶対条件の分析に多くの紙幅を費やしています。そして下巻では、豊かさを手に入れた国と貧しいままの国をそれぞれ詳細に分析をしていき、その後は豊かさが社会にもたらすものについても考察を拡げていきます。(そのなかには「幸せとは何か」という哲学的なものも含まれ、そういった観点を見逃さない価値観の広さが僕には好印象でした。)

繁栄のための4つの条件

これは本書のメインとなる理論であり、ある国が繫栄するために必要な条件というのが「私有財産権」「科学的合理主義」「資本市場」「輸送・通信手段」の4つであることを特に強調しており、そのうち1つでも不足しているとその国は繁栄することができないと説きます。この詳細は事細かに分析されているので本書をお読みいただきたいところですが、印象的なのはこの4つの条件は非常に長い歴史をかけて醸成されてきており、近年200年程を境にようやく達成されたということです。
そして「達成」というのは4つの条件全てがバランスよく達成されて初めて繫栄することを意味しています。テーブルの4本の脚が例として挙げられていましたが、それが最もイメージしやすいかもしれません。ここで得ることができた繁栄のイメージは、4つの条件という具体的な指針としてそのまま組織や個人の豊かさにも置き換えて考えることが可能だと思います。

発想の転換~経済発展が繁栄を促し民主主義が勃興する~

もたらされた豊かさを分析することでわかってきたのは、繁栄した国が形成されるのは国民一人一人の生産性や政治的活動がもとではなく、上述した「4つの条件」による経済発展こそが結果的に民主主義をもたらしたというものです。これは日頃の仕事に没入している僕のようなタイプの人間には得ることが難しい発想の転換かと思いました。「鶏が先か卵が先か」の考え方に似た学びを得ることができます。「民主主義が経済発展をもたらしたのではなく、経済発展によって繁栄をしたことにより民主主義が勃興した」という考え方です。もちろん複雑な歴史のなかでは一概には言えないことにも触れており、詳細はぜひ本書を読んでみてほしいです。

『「豊かさ」の誕生』から考える具体的な人生戦略

本書の最大の魅力は上述した通り、ポジティブな歴史的視座を得られることと豊かになるための条件を学べることです。通常の歴史本で多く語られる政治的な出来事がすっぽりと奥に追いやられた、ある意味での気持ちの良さがあります。さて、それではこの壮大な物語を僕たち普通の日本人がどう活かしていけるのかを、ここ最近はよくよく考えているところです…。壮大な学びゆえに個人の人生戦略に落としこむことが非常に難儀なのです。。。

個人的には、自分が起こしたアクションに対して所属している環境が「4つの条件」を整えているかをしっかりと確認することに尽きるのかなと考えています。自分の仕事がしっかり自分に還元されているのか(私有財産権)、根拠のない噂に振り回されていないか(科学的合理主義)、やりたいことをやるための資金が準備できるか(資本市場)、生み出した価値を効率よく人に届けられるのか(輸送・通信手段)。簡単な思い付きでの言い換えでごめんなさい…。しかしひとまずはこういったかたちで落とし込んで学びを深めていきたいと思います。下巻で示唆されている豊かさがもたらすものの説明については、「4つの条件」を達成するための希望や目標といった位置づけで頭に残しておこうと思っています。

なんだか長々と書いてしまいましたね…。ちなみに個人を振り返ってみると「4つの条件」はまだまだ達成できていないと感じました。通りで豊かになれていないわけですね…。そのため日々の反省と実践の繰り返しでこれから少しずつ整えていこうと思います。こういった日頃の目標もおまけのように貰えるのは読書がもたらしてくれる素敵なことのひとつです。豊かな人生だと思えるようこれからも頑張っていきたいと思います。長々と読んでいただきありがとうございました。

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