今回は数多く存在する日本の小説から個人的なおすすめを10冊紹介しようと思います。前回、日本文学の代表的な作品を10冊選びましたが、今回はそれよりも一段階個人的な趣味に寄せた選び方をしました。おさえておくとよい代表作より、個人の楽しみとして読みたいフィクション編として参考にしてください。
おすすめの日本文学10選
※順番はランキングではありません。
※個人的な感想を判断基準にしているのでご参考までにどうぞ。
①ガダラの豚/中島らも
僕は大学生の頃にこの本を読んで小説の楽しさを知りました。主人公は民俗学者の大生部。超能力、新興宗教、アフリカの呪術を巡る大冒険の物語で、エンタメ的な面白さだけでなくディープな知的興奮も刺激されるとんでもない1冊。文庫版で全3巻の長編小説ですが、徹夜本とも呼ばれている一気読み必至の傑作です。
②羊をめぐる冒険/村上春樹
村上春樹氏が世界的に知られるきっかけとなった著者3作目の長編小説です。
近年の作品ももちろん面白いですが、個人的にも初期の最高傑作だと思っており世界的な評価も非常に高い作品です。
友人の「鼠」が北海道から送ってきた手紙をきっかけに、「僕」は会社を辞めて北海道まで羊をめぐる冒険を始めます。ちなみに海外に翻訳されているのも本作以降だそうです。
③コインロッカーベイビーズ/村上龍
村上春樹氏とは同世代で同性、お互いに交流もあるという日本を代表する作家の二人ですが、 春樹氏 の「羊をめぐる冒険」は本作の影響で執筆を開始したそうです。
社会問題化していたコインロッカーに乳幼児を置き去りにする事件を題材にした物語。コインロッカーに遺棄されて生き残った二人、キクとハシが主人公。二人は既存の社会に反発しながら、それぞれ力強く生き抜いていきます。
④伊賀忍法帖/山田風太郎
推理作家、山田風太郎の忍法帖ものシリーズの第11作。登場する忍者達が奇想天外な忍法を操って戦いを繰り広げます。第1作目が「甲賀忍法帖」、名作と名高いのは「魔界転生」で、僕が個人的に好きな作品がこちらの「伊賀忍法帖」。篝火という魅力的な遊女が登場し、彼女を巡った話にグッと痺れるシーンが出てきます。女性が多く登場するため生々しくて面白いです。
⑤旅のラゴス/筒井康隆
高度な文明を失くした未来を舞台に、世界を旅するラゴスの半生の話が描かれたSF小説。1994年に文庫化されて以来ロングセラーの作品でしたが、2015年当時、何故か本作が1年で10万部売れるというニュースがありました。筒井康隆さんはその様な現象を起こしやすいのでしょうか、2021年にもTikTok売れによって『残像に口紅を』が再ヒットして話題になっています。
⑥悪女について/有吉佐和子
突然謎の死を遂げた女性実業家・富小路公子について、27人へのインタビューに答えるという体裁で物語が進んでいきます。ひとりひとりの証言によって彼女の人物像が少しずつ形成されていく様がとても面白いです。こちらも徹夜本と呼ばれる傑作。
⑦八日目の蝉/角田光代
不倫相手の子供を一目見るだけのつもりが、赤ん坊の笑顔を見て衝動的に誘拐してしまう。「薫」と名付けたその子供とともに逃亡する女性を描いた作品。永作博美と井上真央主演で映画化されました。映画版も本当に素晴らしいです。逃亡先の小豆島での生活の描かれ方が素敵でとても印象的。
⑧博士の愛した数式/小川洋子
事故により記憶が80分しかもたない元数学者の博士とその家政婦である私の物語。この特異な人物設定と美しい数学がこの小説を心温まる感動的な話にしてくれています。今でこそ定番になった「本屋大賞」の第1回大賞受賞作品です。
⑨半沢直樹/池井戸潤
ドラマが社会現象となる以前は『オレたちバブル入行組』というタイトルで知られていました。職場を舞台にした小説を読むことで知らない業界について疑似体験をすることができます。池井戸潤氏はご自身が作家になる前は銀行で勤務していたため、そんな疑似体験にはうってつけの作家。人気の理由のひとつなのかと思います。
⑩海賊と呼ばれた男/百田尚樹
百田尚樹による歴史経済小説。出光興産創業者の出光佐三がモデルで、敗戦後に出光(作中では国岡商店)を大企業に成長させる話が描かれています。石油を巡ったイランとの関わりや、現代とはかけ離れた経営理念の企業活動など、ビジネス指南書の側面でも名著と呼べる内容で多くの読者を魅了しました。仕事や経済に関心が高い人には特におすすめです。
最後に
今回は日本文学の中から個人的なおすすめを10冊選びました。定義が難しいところでしたが、広義な意味でも大衆的なエンターテインメント性が高い作品を選んだつもりです。簡単に言ってしまうと「面白い小説」です。参考にしていただければと思います。
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