カズオイシグロ『クララとお日さま』の紹介と感想

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カズオ・イシグロ
カズオイシグロ『クララとお日さま』の紹介と感想
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 2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロの受賞後第一作。過去のイシグロ作品にも通ずる「信頼できない語り手」は健在ですが、今回の語り手はAF(Artificial Friend)と呼ばれるクララです。
 AF(Artificial Friend)によって語られる未来の世界がどの様な社会なのか、美しい文章を堪能しながら読んで見てほしいと思います。

あらすじ

ノーベル文学賞 受賞第一作
カズオ・イシグロ最新作、
2021年3月2日(火)世界同時発売!
AIロボットと少女との友情を描く感動作。

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 AF(Artificial Friend)と呼ばれるクララと人間の少女ジョジーおよび彼女の周囲の人々を背景に物語は展開していきます。人工知能が発展した未来を舞台に、AFであるクララの視点から語られていく本作の魅力をご紹介します。

信頼できない語り手

 本作はAF(Artificial Friend)であるクララの視点から、その世界を読み解いていくことになります。今までのイシグロ作品も語り手の主観が多く含まれているため、読み手はその背景を推測したり振り回されたりしながら物語を理解していく必要がありましたが、今作は語り手がそもそも人間ではなくAF(Artificial Friend)であるという強い特徴を持っています。
 歴史的事実がベースにあるわけでもなく、未来を舞台をしているのでイシグロ作品の特徴である語り手に委ねる読み方に加えて、SF的な読み方も必要になってくるでしょう。

未来の社会構造

 ネタバレを避けるために詳細は省きますが、クララの語りから読み解いた限りでは未来の社会でも格差は拡がっているようですし、資本主義社会は発展して環境問題も未だ解決されていない世の中のように見えます。格差社会については解説で河内恵子さんが書いてくださっており、読後の理解を整理するのに役に立ちました。
 現在人類が抱えている問題の多くが未来にも残っており、その問題と向き合っていく人間の生活がクララの視点から語られていきます。

 現代の社会が物凄いスピードで発展していっているのは誰もが実感しているかと思います。この作品もSF的な視点で読むとは思いますが、クララというAFの語りを通して考えることによって未来への考え方はより現実的で血の通ったものになるでしょう。

最後に

 今までのイシグロ作品と同様、本作も全編を通して本当に美しい文章で物語が語られていきます。
最初から最後まで描写に引き込まれていき、物語の全貌が見えた時には読者の感情は強く揺さぶられることになっています。
 僕もこの本を読んで色々なことを考えさせれましたが、文章と描写の美しさに対して素直に感動したという気持ちが何よりも強いです。みなさんにもぜひ読んでいただきたいと思っています。今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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