町田康『へらへらぼっちゃん』紹介と感想

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エッセイ
町田康『へらへらぼっちゃん』紹介と感想
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 芥川賞作家でパンク歌手でもある町田康さんの『へらへらぼっちゃん』を紹介します。
 今でこそベストセラー作家として有名な町田康さんですが、本作は駆け出しの作家であった当時の著者初のエッセイ集です。内容は多岐に渡りますがパンクバンドでの活動についても多く書かれており、町田康さんの日常が独特過ぎる文体で面白おかしく描かれています。何しろはじめの章のタイトルは「どうにかなる日々」であり、「遊んで暮らしたいなぁ」から始まります。
 中身がないと言えばそれまでの内容ではありますが、きっと多くの若い人から共感を得るエッセイです。ぜひ読んでみてください。

あらすじ

三年間、なにもしないで時代劇ばかりみていた。テレビの中では毎日のように悪人が誅せられ、善人が希望に満ちて旅立っていく。進展しないのはわたしだけ。ただただ、朝が来て昼が来て夜が来て、喰らい酔って眠りこけていたのである―。町田康にかかれば、日本語はこんなにおもしろい。瞠目のエッセー集。

へらへらぼっちゃん (講談社文庫) 

 パンク歌手として活動している町田康さんの日々がだらだらと描かれていきます。ストーリー性のない内容で日常をありのままに描いていますが、当時の駆け出しの作家であった町田康さんから見た世界観が独特すぎて癖のある文体で書かれ、ぐいぐいと引き込まれていきます。
 この日常を読んでいると色々なことがどうでも良くなってしまう魅力があり、僕は物事を深く考え過ぎてしまった時などにあえてこのエッセイを読むことがあります。僕たちの肩の力を抜いてくれる大好きな作品です。

バンド活動と世の中の考察

 町田康さんは、町田町蔵という名義でINUという伝説的なパンクバンドのボーカルを務め、17歳の時にファーストアルバム「メシ喰うな!」でデビューします。
 「メシ喰うな!」は僕も大好きなアルバムですが、バンド名もアルバム名も独特過ぎてなんだかよくわからないながらも好きになっていった記憶があります。

 本作の中ではバンド活動についての話が多く書かれており、なかなか売れない時代に貧乏であることや銀行への考察も書かれ、パンクバンドのボーカリストが社会とどうにかこうにか向き合っている様が非常に面白いです。「こんな風に世の中を見てんの?」と思わず笑いながら癖のある文体に引き込まれていくこと間違いなしです。

阿呆の生活

 「阿呆の生活」という章では、ここぞとばかりに日中から酒を飲みながら時代劇を見まくっている話があります。
 本作を象徴する様なダメダメな暮らし振りと自己嫌悪の独白が書かれるのですが、町田康節で書かれたダメダメな暮らしは何だか魅力的で「それでいいんじゃないの?」とか「人生そんなもんじゃないの?」うっかり思ってしまうことがあります。この不思議な脱力感を本作を読むことでみなさんにも感じてほしいと思います。

最後に

今日は独特過ぎる文体で肩の力を抜いてくれる面白エッセイ『へらへらぼっちゃん』を紹介しました。
難しいことを考え過ぎて疲れてしまった様な人にこそぜひ読んでほしいと思います。

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