中島らも『愛をひっかけるための釘』紹介と感想

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中島らも『愛をひっかけるための釘』紹介と感想エッセイ
中島らも『愛をひっかけるための釘』紹介と感想
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 天才作家とも奇才作家とも呼ばれる中島らもの『愛ひっかけるための釘』を紹介します。小説家としての印象が強いかもしれませんが、エッセイもたくさん書いています。著者が日常どんなことを考えているのかを知ることができることがエッセイの魅力です。今日はそのなかから『愛をひっかけるための釘』を紹介します。

あらすじ

早く、一秒でもいいから早く大人になりたい。少年たちは理不尽な叱られ方をする度に怒りを一種のホルモンに変えて成長していく―。空を飛ぶ夢ばかり見た少年時代、よこしまな初恋、金縛りから始まる恐怖体験、さまざまな別れと出会い、とことん睦み合った酒の正体、煙草呑みの言いわけ。薄闇の路地裏に見え隠れする、喜びと哀しみと羞じらいに満ちた遠い日の記憶。

愛をひっかけるための釘 (集英社文庫) 

 本作は一貫したテーマがある訳ではなく、様々なテーマに独自の考えが書かれたエッセイです。あとがきによるとタイトルの『愛をひっかけるための釘』とはイギリスだかフランスだかの格言からとったそうで、この格言に異論があると言います。異論の内容についてはぜひとも読んでご確認ください。
 幅広い内容が書かれており、人の出会いと別れについての深い考察から酒や煙草の様な嗜好品との付き合い方、最近ニンニクにハマったといったことまで…。ある話では涙が出そうになりますが、その次の話ではあまりのくだらなさにニヤニヤと笑っている…感情を振り回してくれる珠玉のエッセイです。
どれも格別に読みやすく、ぐいぐいと引き込まれる文章力で魅了されているうちにあっという間に読み終わってしまいます。表紙も美しいデザインの文庫版で、ぜひとも気軽に読んでみてください。

出会いと別れについて

 はじめの「ハローグッドバイ」という章には、はじめと終わりに出会いと別れについての深いエピソードからはじまります。読んだ漫画のなかで見つけた「人と出会あいますと、それだけ哀しみが増しますから…」という象徴的なセリフについての考察が書かれ、年を重ねるに連れて出会った人との別れ、それも不幸によることも多くあり、新しい出会いにポジティブな気持ちになれなくなる。これを人として無理もないと言っています。それでは自分はどう生きていくのか、周りに自分をどう思ってもらうように生きるのか、思わぬ答えを書いていますが、そういったことを考えられる話でこの本は始まります。

 そして「ハローグッドバイ」の終わりの章には「サヨナラにサヨナラ」という哲学的な珠玉のエッセイがあります。世界の森羅万象から宇宙そして時間へと考察を巡らし、今現在の私たち人間同士の出会いと別れについて結論を提示します。ここまでわずか4ページ足らずで深い深い感動を覚えるとても深い話でこの章は終わります。

散りばめられた日常の話

 本作には深い魅力的な話が書かれておりそれが何よりのおすすめでもあるのですが、全編がその様な話で構成されているわけではありません。基本的には日常的な洞察でほとんどの話が構成されており、合間合間にふと上記の出会いと別れについてなど、深く心に突き刺さる話が挟まれています。
 パスタを茹でるために寸胴に水をたっぷり入れて湯を沸かし、、とか、最近ニンニクに猛烈にハマってしまって、、とかそんな内容の話はたくさん散りばめられています。
 そんな読みやすい肩の力が抜けた内容に時折深い話が挟まれているところが、人柄を表している気がしてなりません。

最後に

 『愛をひっかけるための釘』という美しいながらもよくわからないタイトルであるこのエッセイですが、ご紹介させていただいた通り笑いあり涙ありの名作だと思っています。リラックスして笑いながら通して読み進めていくうちに、時々心に突き刺さる様な珠玉の話に出会うことができる、そんなおすすめのエッセイですのでぜひ読んでみてください。

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