中島らも『異人伝 中島らものやり口』紹介と感想

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中島らも『異人伝 中島らものやり口』紹介と感想エッセイ
中島らも『異人伝 中島らものやり口』紹介と感想
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 天才作家とも奇才作家とも呼ばれる中島らもさんの『異人伝 中島らものやり口』を紹介します。
中島らもさんは小説家なので面白い小説をたくさん書いていますが、エッセイもたくさん書いてくれています。小説を読んだことがある人はいかにらもさんが常識の枠にとらわれず自由な発想で奇想天外な考えを持っているかわかると思いますが、
 そんならもさんが日常どんなことを考えているのかを知ることができるのが彼のエッセイです。今日はそのなかから『異人伝 中島らものやり口』を紹介します。

あらすじ

52歳は「失っていく」年。けれど逆に一種のすがすがしさがある。2004年7月に52歳で亡くなった著者が、死の直前に人生をふり返り、酒とクスリ、社会と家族、娯楽作家の業、そして自らの「死」と「生きること」を直感的に語る。死ぬのも怖くない。貧乏も怖くない。ただ愛が怖い。中島らも最後のメッセージ。

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 本作は中島らもさんが亡くなった2004年に書かれたエッセイであり、存命中に出版された最後のエッセイとなります。転落事故により亡くなられたので決して死を意識して書き上げた遺言的なものではなく結果的に最後のエッセイになったかたちですが、内容は出生時や幼少期の記憶から音楽・文学への出会い、サラリーマン時代から作家に転向していくまでと、彼の人生を振り返るような構成となっており自伝的エッセイとも言えます。
 最後の「寝言は寝てから」という話では死についてと死後についての考察が書かれており、読み終えると同時にらもさんの最後のメッセージを受け取ることとなります。巻末には「中島らも略年譜」が記載されており、彼の人生を年表として振り返ることができます。本当に濃くてインパクトのある生き方をした唯一無二の作家だったと思います。
 時代を追って人の価値観は変化しますが、今読んでも色あせることはありませんし、時代が変われば変わるほど普遍的な魅力が増すかもしれません。天才作家の生き様とメッセージをぜひ受け取ってほしいと思います。

音楽・文学との出会い

 らもさんは幼少期は頭の良い優秀な子供で、マハトマガンジーやキュリー夫人の伝記を読むような「イやなガキ」だったと言います。しかしその後、小説では山田風太郎、音楽ではボブディランなどに夢中になり勉強をしている暇がなくなり、試験にも出ず酒およびいけないものを嗜みながら難解な哲学書を読むような退廃的な学生生活を送ります。
 音楽や文学からの影響を強く受けて私生活にも反映されていき、無茶苦茶な生活をしていく様が描かれています。学生結婚をしたこともあり大学卒業後は就職することになりますが、その後壮絶なフーテン生活を送り作家に転向していきますが、この生き方に音楽や文学からの強い影響があるのは間違いあ りません。

 当時の日本社会で音楽や文学からの影響をここまで生き様に反映できた人が存在したことに私は本当に驚いています。1億総中流と言われ周囲の人は全員ほとんど同じ方向を向いてモーレツに働いているものだと思い込んでしまっていましたが、そんな社会のなかにもこの様な生き様を全うできた人が存在したんだと。時に自分の生き方を時代のせいにして覚めた視点を持ってしまうことがあるのですが、そんな自分が恥ずかしく思えます。自分が納得いくように生きることのカッコ良さを強く学ぶことができる一冊です。

最後のメッセージ

 らもさんは35歳までに死ぬつもりだったと書いています。一度アルコール性肝炎で入院した時に死を意識しましたが無事に治ってしまった。その時に書いたのが名作『ガダラの豚』『バンドオブザナイト』『空のオルゴール』で、らもさんは死に損ねのおまけと言っています。
 その後も多くの小説やエッセイを世に出したわけですが、どれもその様な気持ちで書いたのでしょうか。こういった人生経験と価値観のもと書かれた作品は、作家という芸術性に長けた価値観を持つ人にしかできない仕事だったのかもしれません。

 本作の終盤には死というものを意識した話がいくつか出てきます。もちろん遺言のような類ではありませんが、結果的に私たち読者に向けての最後のメッセージとなりました。

最後に

 今となっても逆に現代だからこそ中島らもさんの様な生き方をできる人はほとんどいなくなり、彼の作品を読むことの価値は増しているように思います。僕もこの本を読みなおす度に自分の生き方を考えなおすきっかけを貰っています。ぜひみなさん読んでみてください。

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