高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』紹介と感想

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高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』紹介と感想エッセイ
高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』紹介と感想
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 フォークシンガー高田渡による、異端児としての生き方が描かれた自伝『バーボン・ストリート・ブルース』を紹介します。若い方はご存知でない人も多いかもしれませんが、『タカダワタル的』という映画にもなった伝説なフォークシンガーです。
 渡さんの歌は、達観した視点で皮肉を散りばめた普遍的な魅力を持っており、今聞いても色あせることがありません。まずは曲を聴いてみてほしいと思います。そしてもし好きになったら、ぜひ本書を手にとってみてください。

あらすじ

フォークソングが一世を風靡した頃、奇妙な曲「自衛隊に入ろう」が話題になった。「あたりさわりのないことを歌いながら、皮肉や揶揄などの香辛料をパラパラふりかけるやり方が好き」な高田らしいデビュー曲である。以後、世の流行に迎合せず、グラス片手に飄々と歌い続けて40年。いぶし銀のような輝きを放ちつつ逝った、フォークシンガー高田渡の酔いどれ人生記。

バーボン・ストリート・ブルース (ちくま文庫)

 高田渡さんの魅力は何と言っても皮肉が込もった歌詞です。デビュー当時は60年代後半で学生運動が盛んな時代で、社会変革を訴えるフォークソングが流行していました。
 しかし、当時労働者の権利を主張して社会変革のデモなどに身をささげていた人たちは、数年後にはころっと立場を変えて会社員となり同じ論調で会社に身をささげています。時代の流行から一歩後ろに下がった視点を持つ渡さんは、そんな時代の流行を嘲笑うかのようにその時代の日常を淡々と歌い上げ、結果的に社会変革を訴えるフォークソングよりも強いメッセージを放つことになります。
 本作にも「普通のに人々の生活を歌に」という章があります。どこで見たか忘れてしまったのですが、「日常を歌うことが何よりの反戦歌」とも語っていました。
 本書にはこの様な考えを持つに至るまでの若き日々からのエピソードが渡さん本人の文章で書かれています。素敵な価値観をお持ちなので、人生論としても非常に参考になるかと思います。

異端視される若かりし頃

 『資本論』というのはとてもいい本なんでしょうけど、西洋人の発想で書かれた本でありますし、彼らとは生活も違うわけだから、それをそのまま読んで納得しろというのが、どうも僕には理解できません」
 そう言ってしまって以来、僕はまわりから異端視されるようになった。

バーボン・ストリート・ブルース (ちくま文庫) p.64

 歌手としてデビューする以前に印刷会社の文選工として働いていた頃の職場でのエピソードです。当時の若者はこぞって難しい本を読みふけり、理論武装をして若者同士で語り合っていたとよく聞きますが、渡さんの周りでもそうだったようです。そのなかで、彼は「本ばかり読み漁ってはその内容を丸飲みしているヤツ」がどうしても好きになれず、上記の様な発言をしてしまったとのこと。
 こうした環境で渡さんの達観した視点が醸成され、笑いをふんだんに取り入れて彼の歌になっていくのだと思うと、納得できるところがありました。

旅する詩人と地元に居つく詩人

 本書の後半では渡さんの旅行記が書かれており、日本全国のツアーでの出来事と奥さんと共にヨーロッパを周った記録が写真とともに書かれています。この旅も渡さんらしさが貫かれており、観光地を周るのではなく現地の飲み屋へ趣きビールやワインを飲みながら地元の人々を見て楽しむというものです。

 一方で本書は「今日も僕は「いせや」で焼酎を飲む」という章で締めくくられます。「いせや」というのは東京都吉祥寺駅から徒歩数分にある老舗の焼き鳥で、井の頭公園にも隣接しているため老若男女に人気のお店です。昔ながらの頑固な雰囲気が残っているところが何よりのお気に入りで、地元であるためへべれけになっても帰れることもあり、毎日昼からいせやに通っていたそうです。

 旅行記の後にいせやへの愛のある話を読むと、幅広い活動の中にも一貫した生き方と魅力が存在していることがわかります。

最後に

 本日はフォークシンガー高田渡さんの『バーボン・ストリート・ブルース』を紹介しました。ぜひとも歌を聴いてほしいところですが、この本だけでも充分に楽しめる読み安い文章で構成されているのでお気軽に読んでみてください。

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