ミシェル・ウェルベック『ある島の可能性』の紹介と感想

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ミシェル・ウェルベック『ある島の可能性』の紹介と感想ミシェル・ウェルベック
ミシェル・ウェルベック『ある島の可能性』の紹介と感想
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 ミシェル・ウェルベックは1958年生まれのフランス人作家で、98年『素粒子』がベストセラーとなり、2010年『地図と領土』でフランスで最も権威のある文学賞であるゴンクール賞を受賞しました。
2015年にはイスラム教批判とも捉えられるスキャンダラスな小説『服従』が発売された日に、奇しくもシャルリー・エブド襲撃事件が起きたことで一挙に有名になりました。
 本作はウェルベックの長編4作目にあたります。今作は『プラットフォーム』や『服従』のような近未来が舞台ではなく、2000年後の未来の人類がクローンを再生し続けて現代社会を考察しながら物語が展開していきます。
現代社会の人間である主人公ダニエルの人生を通して、生きることについて考えさせられる衝撃作です。

あらすじ

世界の終わりのあと、僕は電話ボックスにいる―快楽の果ての絶望に陥った過激なコメディアン兼映画監督のダニエルは、“永遠の生”を謳うカルト教団に接近する。二千年後、旧人類がほぼ絶滅し、ユーモアと性愛の失われた孤独な世界で、彼のクローンは平穏な毎日を生き続ける。『服従』著者による“新しい人類”の物語。

ある島の可能性 (河出文庫)

 本作は2000年後の未来が舞台になっていますが、あくまでも描かれているの現代社会です。
どういうことかというと、未来の人類(作中ではネオヒューマンと呼ばれます)は、死期が近づくと肉体は死にますが人格は後世に引き継ぐことができ、再生を続けることができるのです。そしてネオヒューマンは自分の先祖の人生の記録を読んで追体験するだけの日々を送っています。

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未来から眺めた現在

 ネオヒューマンが眺めているダニエルはコメディアン兼映画監督で、人生においてはそこそこ成功しているように見えます。ダニエルが創作している作品はタブーだらけの酷いタイトルの作品ばかりで、そんなダニエルは女性と恋に落ち愛を求めています。雑誌の編集長である知的な女性イザベルと、20以上年齢が下の女優エステルと恋に落ちます。ダニエルは生涯に渡って女性への渇望に囚われ続けているように思います。
 そんななか、ダニエルはカルト的な新興宗教団体エロヒムに接近し、団体の恐ろしい活動が描かれていくことになります。壮大なうえに突飛な物語ですが、愛と性、不老不死など様々な目を伏せたくなるような現実がごっそり描かれている大作です。

不老不死について

 ウェルベックの作品は発展した資本主義社会が未だ加速し続けて人々の暮らしに侵入し続けている様が頻繁に描かれています。
 資本主義のその後について、作品ごとに性に未来を見出したり芸術に未来を見出したり、様々な方面から社会を見ることができますが、本作から読み取れるのは不老不死と宗教のように思いました。冒頭に書かれている通り、「永遠に生きる価値」を持っている存在はあるのでしょうか。

最後に

 この作品は僕には壮大なうえに深すぎてキャパオーバーだった感があります。。しかしこれ程に生きることの価値観を拡げてくれる強烈な作品はあまりなく、未だに強烈な印象が残っています。
 文庫版で500ページを超える大作ですが、お時間のある時にぜひ読んで見てほしいです。

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