今もカフェなどでコーヒーを注文する時に、「アメリカン」を選ぶ人も多いでしょう。
カップにたっぷりと注がれているが味は薄い。それがアメリカンコーヒーの特徴です。
この特徴って何なんでしょうか。これにはアメリカという国家の独立に関わる面白い歴史が関係しています。
ボストン茶会事件が勃発
17世紀中頃になるとヨーロッパから北米大陸にコーヒーがもたらされるようになります。しかし当時のアメリカはイギリスの植民地であったためコーヒーよりも紅茶が好んで飲まれていました。
そんななかアメリカの歴史でも重大な転機となる「ボストン茶会事件」が勃発します。当時は宗主国であるイギリスから植民地のアメリカに対して厳しい法律が課されていたのですが、時代の経過とともに厳しい法律は順々に廃止されていく傾向にありました。
しかしそんな真っ只中に茶法という、植民地での茶の販売をイギリス東インド会社に独占させるという法案が制定されました。イギリス東インド会社は事実上の国営企業ですから、植民地であるアメリカ人たちはイギリスへの利益のために自由な貿易を禁止されることになってしまったのです。当然アメリカ人たちはこれに猛反発をします。

こうしたなか、茶法の制定に反対する一部のアメリカ人たちがボストン港に停泊していた東インド会社の貿易船に乗り込み、積んであった茶葉9万ドル分を海に投げ捨ててしまったのです。
これが歴史に名高いボストン茶会事件です。小さな事件ではありますが植民地人が本国に直接的な行動で反発したはじめての出来事であるため、アメリカ独立のきっかけを象徴する歴史的事件になっています。
紅茶を意地でも飲みたくない人々

現在のアメリカ人があまり茶を飲まないのは、このボストン茶会事件がきっかけだと言われています。東インド会社の紅茶を意地でも飲みたくない人々が、紅茶の代用品としてコーヒーを飲み始めたからです。あくまでも代用品なので紅茶のように何杯もおかわりできるように浅煎りにして苦みを薄めました。
これがアメリカンコーヒー誕生の歴史です。重要なのは紅茶の代用品であることへの意味づけです。つまり「コーヒーが飲みたい」のではなく「紅茶を飲みたくない」から代わりコーヒーを飲む。薄いアメリカンコーヒーを飲むことが本国への反抗の意思を表しているわけだったんですね。
敵が飲むものは嫌います。その後1812年に米英戦争が勃発し、ちょうどその頃にアメリカはブラジルからコーヒーを輸入することができるようになりました。ブラジルはコーヒーの生産量が現在でも世界一の国です。コーヒーは急速にアメリカに普及することとなりました。
ブリキのマグカップで無造作に飲む
こういったアメリカ人の独立心が詰まったアメリカンコーヒーという文化は、ヨーロッパ人が上品に飲む様な雰囲気とは対極のスタイルで定着していきます。

アメリカ映画などでもよく見られるように、軍手を付けてブリキのマグカップで無造作にごくごくと飲むような、ワイルドで仕事とともにあるような印象です。
ビジネスに注力するベンチャー起業家や大手企業のエリートがスターバックスのコーヒーを飲んでいるイメージがあるかと思いますが、これにはこういった歴史も関係しているのかもしれません。
まとめ
ちなみに僕はコーヒーの味が薄いのはあまり好きではないのですが、飲み方としてはマグカップにたっぷり注いでごくごくと飲む「アメリカン派」です。
そのため薄くならないようにドリップして、濃いめのコーヒーをマグカップでごくごくと飲んで過ごしています。無造作に飲むのが何だか好きなんですよね。
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参考文献
ツウになる! コーヒーの教本/諸山 泰三 フワッティカフェ

図説 コーヒー/UCCコーヒー博物館

最後に
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