「欧風カレー」と聞くとどんなカレーを思い浮かべるでしょうか。野菜や果物をじっくりことこと煮込んで作られたヨーロッパ風のカレーといったところかと思います。
それ自体は正しいのですが、実は欧風カレー自体は日本で誕生したカレーでヨーロッパには存在しません。今日は欧風カレーについて簡単にご紹介します。
欧風カレーはヨーロッパに存在しない

欧風カレーという呼び方がありますが、実際のところこれらは主にイギリスのカレーのことを指します。
フランスもイギリスと同様に植民地政策時代には南アジアに積極的に介入しますが、イギリスほど食文化を自国に取り入れようとはしなかったそうです。
そして、そんなフランスでもカレー粉は使用するようにはなります。しかしそれはあくまでも風味付けであり、野菜や肉を煮込んで食べる文化は定着しなかったようです。
イギリスのカレーを日本人がアレンジ

イギリスのカレーは調理のたびにスパイスを調合するインドカレーとは異なり、すでに混合済みのカレー粉を使用するのが特徴です。
このカレー粉はクロスアンドブラックウェル社(C&B社)というイギリスの企業が開発したものです。この様に、ヨーロッパでは主にイギリスでカレーが定着していました。
このイギリスのカレーにブイヨン(出汁)をベースにしたり、隠し味にワインを使用したり、まさにフランス料理の手法でアレンジをしたのが当時の日本人でした。
そのため「欧風カレー」と言っても、イギリスでもフランスのことでもなく、ヨーロッパのカレーを参考に日本人が生み出したものなので、ヨーロッパには存在しないのです。
カレー専門店「ボンディ」

東京都千代田区神田神保町に店を構える1973年創業のカレー専門店「ボンディ」というお店があります。
このお店の創業者である村田紘一氏はもともと東京の高島平でインディラというカレー店を経営していましたが、神保町「古書センタービル」のオーナーからの誘いをきっかけにボンディを創業します。
村田氏は若い頃に、絵画、彫刻の勉強のためにフランスに渡りました。そこでフランス料理に使うブラウンソースの奥深さを知ることになります。
フランス仕込みのブラウンソースをカレーに取り入れることはできないだろうかと研究を重ね、初めて「欧風カレー」という名称で他店に先駆けメニューに加えて売り出したのです。
この「欧風カレー」は日本の料理界を席巻して日本中に「欧風カレー」が普及します。名づけ方が「欧風」だったために、フランス料理の技法は裏に隠れることになりました。
まとめ
「欧風カレー」と聞いたら、イギリスで定着していたカレーをフランス料理の技法で日本人がアレンジして売り出したカレーだと覚えておきましょう。
大切なのはヨーロッパには存在しないカレーだということ。いつも思いますが、日本人の文化の吸収力ってすごいですよね。
最後に
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参考文献
カレーの世界史/井上岳久
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