「マッサマンカレー」はタイの南部、それも一部の地域だけで食べられていたローカルフードですが、一方で国外からは「世界一美味しいカレー」と言われています。
どの様なカレーなのか、また何故世界一美味しいと言われているのかご説明します。
CNNが選出したことがきっかけ
マッサマンカレーが世界一美味しいカレーと呼ばれるようになったのは、2021年5月20日にCNNトラベルが発表した「世界の美食トップ50」で、1位に選出されたためです。
この影響によって、マッサマンカレーは「世界一美味しいカレー」と言われようになっています。
しかし、実はそれ以前の2011年にもCNNは「世界で最も美味しい食べ物ベスト50」を発表しており、その時にも1位になっていたのです。
当時マッサマンカレーは本国タイでもあまり知られておらず、タイの南部でもいわゆるご当地カレーの様な位置づけで食べられていたカレーなのですが、これにより世界的にも一躍有名になったという経緯があります。
もともと2011年にも評価されていたマッサマンカレーが、2021年に10年の時を経て再び再評価を受けて話題になったということです。
イスラム教のカレー「マッサマンカレー」
「マッサマン」という言葉は「イスラム教の」という意味です。つまり「マッサマンカレー」は「イスラム教のカレー」という意味です。
タイは仏教国なので、タイに「マッサマンカレー」という名のカレーがあるのは、歴史上外国から伝えられてきた食べ物であるということになります。
16世紀にインドから東南アジアにやってきたイスラム教徒の貿易商が伝えたものだと言われています。タイの南部に伝えられていたご当地カレーが、近年になってメディアの後押しもあり世界的に有名になったのです。
イスラム教のカレーであるために使用されている肉も、豚肉ではなくて鶏肉が使われています。仏教国で受け継がれても、伝統や信仰はしっかりと受け継がれているようです。
一般的なタイカレーの基本情報
マッサマンカレーの特徴を理解するために、一般的なタイのカレーについて説明します。
一般的なタイのカレーにはゲーン・キョワン(グリーンカレー)、ゲーン・ペッ(レッドカレー)、ゲーン・ガリー(イエローカレー)など、様々な色合いのカレーがあります。
これらをカレーと呼んでいるのは外国人だけで、タイの人々は「スパイシーな汁物」くらいに捉えているようです。この辛い「スパイシーな汁物」のことを「ゲーン」と呼びます。
タイは稲作が盛んなのでカレーの主食はパンではなく米が一般的です。また、トウガラシの強烈な辛さがあることや、ココナッツミルクと一緒に調理することも特徴のひとつです。
グリーンカレーについては別の記事で詳しく書いています。
タイカレーとマッサマンカレーではスパイスが異なる
タイのカレーでふんだんに使われているスパイスは、種類豊富なトウガラシが基本となり、これにバジルやレモングラス、コリアンダー(パクチー)などが加わり爽やかな風味が加わっています。
強烈な辛さ、ココナッツの甘味、ハーブの爽やかな香り、これらを合わせて楽しめるのがタイカレー(ゲーン)の特徴です。
一方でマッサマンカレーには、カルダモンやナツメグ、シナモンがふんだんに使用されています。
タイのカレー | マッサマンカレー | |
---|---|---|
スパイス | トウガラシ バジル レモングラス コリアンダー(パクチー) など | カルダモン ナツメグ シナモン など |
味の特徴 | 強烈な辛味 爽やかな味わい ココナッツの甘味 | 辛さは控えめ マイルドな味わい ココナッツの甘味 |
肉の種類 | 鶏肉 豚肉 など | 鶏肉がメイン 牛肉・羊肉など 豚肉は使わない |
これらはもともとタイにはなかったスパイスで、インドで多く使われているスパイスです。タイでは自国のカレーを「ゲーン」と呼び独自の食文化を醸成していました。
マッサマンカレーはタイのカレーではありますが、実はインドカレーに近い味わいや香りのカレーです。
食べる機会があったらイスラム教から伝わったご当地タイカレーを食べているんだなと思って食べてみましょう。
どことなくアラブの宮殿のような雰囲気が感じられる魅力的なカレーです。ぜひ食べてみてください。
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参考文献
カレーの世界史/井上岳久
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