カレーが日本に普及した歴史に迫ります。
日本にカレーを普及させたインド人は、ラス・ビハリ・ボースというインド人で、カレーを通じて日印友好を推進したA.M.ナイルというインド人もいます。彼らの功績は計り知れません。
その後、日本には爆発的にカレーが普及することになります。そんな、今や国民食とも言える「カレーライス」には知られざる歴史があります。
まず、日本で「カレー」という言葉を初めて使ったのは福沢諭吉だと言われています。当時は「コルリ」と呼んでようですが。ちなみに福沢諭吉がカレーを食べたという記録は残っていないそうです。
そして日本で初めてカレーを食べたのは明治の物理学者・山川健次郎だと言われています。国費留学生としてアメリカへ渡る際に、船の中で「ライスカリー」を食べたそうです。
そんなカレーがここまで普及したのには大きな理由が2つほどあります。それは戦争と給食です。
日本の「カレーライス」の起源|栄養価の高い軍用食
カレーライスが日本に普及することになったのは、栄養価の高く大量の調理もしやすいことから、軍用食に非常に適していたためです。カレーライスの様々な要素は軍用食として最適なものばかりでした。
戦争に従事する軍隊という組織では、大人数の食事を用意する必要があります。
また、いつ敵の攻撃を受けるかもわからない状況であるため、素早く調理できてすぐに食べられる料理が重宝されるという固有のニーズがありました。
カレーは大きな鍋に肉や野菜を入れて煮込めば、何十人もの料理をすぐに作ることができます。また、盛り付けるお皿も一枚で済むため後片付けは簡単です。
そして何より美味しくて栄養バランスも良い、そんなカレーは軍隊の食事としては理想的なものでした。
カレーには辛味成分の「カプサイシン」が含まれており、体を温める効果もあるため、寒冷地での軍事行動にも適していたのです。
こうした理由から当時の日本の軍隊ではカレーが浸透していきました。軍隊には日本各地から若者たちが集まってきます。彼らは実戦と演習でカレーの作り方と美味しさを覚え、兵役を終えると故郷に戻って覚えたカレーを家で作って家族で食べました。
この様にして日本全国に一気にカレーが普及していったのです。
戦後カレーライスが給食の統一メニューに採用|カレーの日
終戦後、一部の地域でしか実施されていなかった給食は、1951年2月から全国に拡大することになります。
翌1952年4月までに日本全国の小学校で食べられるようになりました。物資が乏しい頃は現在の様な「カレーライス」ではなく、カレー粉を使用した「カレー汁」の様なものだったようです。
いわゆる「カレーライス」が給食に登場するのは、1970年以降になってからのことです。
その後、全国学校栄養士協議会という日本の食育事業を担う団体が「学校給食の意味や大切さを知ってもらいたい」というきっかけから、日本全国で統一のメニューを提供することが企画されました。
その際に提案された学校給食のメニューが「カレー」で、実際に提供された日が1982年1月22日だったことから、実は1月22日は「カレーの日」なんだそうです。
提供にあたっては全国の子供たちにアンケートを実施し、その結果でカレーの人気が第一位だったため「カレー」が統一メニューとして選ばれました。もともとカレーの美味しさは認知されていたのですね。
カレーライスは日本の歴史に関わっていた|カレーと日本
カレーの日本社会への全国的な普及に関しては、軍隊と給食という、いずれも戦争の影響が背景に存在していたのでした。
歴史というのは身近なことにまで影を落としているものです。
「カレーライスが日本を変えた」は大げさにも聞こえるかもしれませんが、歴史を変える重要な局面で最も多く食べられていた食べ物なのですから、言い過ぎではないかと思います。
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参考文献:カレーの世界史/井上岳久
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