ジョン・スタインベック『エデンの東』の紹介と感想

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ジョン・スタインベック
ジョン・スタインベック『エデンの東』の紹介と感想
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 ノーベル文学賞作家である米国人作家ジョン・スタインベックの『エデンの東』を紹介します。スタインベック自身の自伝的小説であり、自己の最高傑作と呼んでいる超大作です。長い作品ではありますが、時間をかけて読む価値は間違いなくありますのでこの記事をきっかけにぜひとも手に取ってみてくださると非常に嬉しく思います。

あらすじ

コネティカットの農家に長男として生まれたアダム・トラスク。暴力を嫌い、つねに平穏を求める従順な青年に育ったが、厳格な父サイラスの愛を渇望する腹違いの弟チャールズに虐げられ、辛い日々を送っていた。サイラスは息子の弱さと兄弟の不仲を案じ、アダムにインディアン討伐の騎兵隊に参加するよう命令するが……。全四巻。

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫) 文庫

 本作は伝説的俳優のジェームスディーンが初主演を果たし一躍スーパースターになったきっかけの映画として知られています。しかし、実は映画は今回紹介する原作のほんの一部を映画化したに過ぎません。
 『エデンの東』は文庫版で全4冊の大作となっています。親子3代に渡る壮大な構成から、父と子の葛藤について、人間の自由な意思、罪の意識、など多くのテーマが盛り込まれた作品となっています。

壮大な物語の文庫第1巻はカリフォルニアのサリーナス盆地の描写から始まります。

世界文学史上最悪の毒婦と呼ばれるキャシーが登場。

アダムの子供、双子のアロンとキャルが登場。ジェームスディーン主演の映画版はアロンとキャルの物語から映画化されています。

家族3代の物語は文庫第4巻で幕を閉じます。

兄弟、双子

 本作は親子3代に渡る長編の物語となっていますが、それぞれの世代で兄弟・双子の関係があり、傍らが父親に気に入られ自分の存在価値に悩み衝突をするという展開が多く描かれています。ここで描かれている2つの対立と葛藤から、世の中の善と悪は運命づけられたものなのか、それは受け継いだ血によるものなのか、など人間の存在意義に正面から向き合う必要のある事柄が語られていきます。映画でジェームズディーンが演じているキャルも、兄のアロンとは違って自分は父から愛されていないのではないかと強く苦悩するシーンが演じています。

世界文学史上最高の毒婦

 本作には世界文学史上最高の毒婦と呼ばれる、キャシーという女性が出てきます。ネタバレを避けるため詳細は書きませんが、彼女は周囲を巻き込んでいく得体の知れない冷酷な毒婦として描かれていますが、映画化されたアロンとキャルの親世代にあたり、キャシーはまさにその2人の母親です。
 そんな毒婦と呼ばれたキャシーを母に持つアロンとキャルは自分に流れている血を意識し運命について葛藤することになります。

物語の背景にある聖書

 スタインベックはキリスト教聖書から強い影響を受けている作家であり、本作はカインとアベルの物語がモチーフとなっています。エデンの園で禁断の木の実を食べて追放されたアダムとイブの長男カインと弟のアベルですが、それぞれが神に供物を与えたところアベルの捧げた子羊は喜ばれたがカインが捧げた作物は拒否されてしまいます。強い嫉妬を覚えたカインはアベルを殺害し、神に見抜かれてエデンの東に追放されるという話です。

 この背景を知りながら物語を読み解いていくと、兄弟間で自分が認められずに嫉妬心を抱くという流れが、親子3代に渡って連綿と受け継がれていることがわかってきます。その中でスタインベックが何を描きたかったのかは読み手の解釈にもよりますが、聖書に書かれた神からの絶対的な運命を受け入れて生きていくのではなく、苦悩して抗いながら自分自身で生きていく人間側に焦点を当て、聖書の価値観に向き合っていると読み取ることができます。もちろん聖書のことを考えずに親子3代の物語として読むことも可能ですが、合わせて理解すると深みが増します。

最後に

 今回ご紹介した『エデンの東』は文庫本で全4冊ととても長い物語ですが、ご紹介した通り壮大な物語のなかに多くのテーマが盛り込まれた名作ですので、お時間のある時にぜひとも読んで欲しいと思っています。
 ちなみに文庫版は比較的新しい訳の文章なので、とても読みやすくてすらすらと読み進めることができますよ。

『エデンの東』と並ぶ代表作である『怒りの葡萄』もおすすめですので興味があればお読みください。

本作も含めたアメリカ文学のおすすめもまとめています。もしよければどうぞ。

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