ビールのアルコール度数はおよそ4.5%~5.5%程度が一般的です。クラフトビールによっては7%以上のIPA(インディアペールエール)などもあり、刺激を楽しむことができます。
しかし世界は広く、格段にアルコール度数が高いビールがこの世には存在するようです。なんとそのアルコール度数は67.5パーセントだとか。
Snake Venom(スネークヴェノム)
そのビールの名は「Snake Venom(スネークヴェノム)」。スコットランドのクラフトビールでアルコール度数は67.5%です。ボトル上部に「Warning! This beer is strong」と書かれたタグがついているほど。67.5%なので気を付けないとですね。
アイスボック製法
どうやってこんなにアルコール度数を高めているのか。それにはアイスボックという独特の製法が用いられています。
この製法はタンクで醸造したビールをなんと凍らせていきます。じわじわと凍らせていくと表面から凍るので、その表面の氷を取り除く。そしてまたじわじわと凍らせて、また表面の氷だけ取り除く。これを何週間もかけて繰り返していくとアルコール度数がどんどん高まっていきます。
それで何故アルコール度数が高まるのかというと、水とアルコールの氷点(水の凝固点、沸点の逆)には差があり、アルコールの方が氷点が低いから。つまり、凍らせて温度を下げていくと水が先に凍ります。表面の取り除かれた氷はアルコールではなく水分なので、必然的にアルコールが残るようになります。
こうしてどんどんアルコールが高くなっていくという仕組みを用いた製法がアイスボックと呼ばれるものです。
アイスボックの競争へ
このアイスボック製法は凍らせて水分を取り除く工程を繰り返せば繰り返すほどアルコールが高まっていきます。そのため、欧米のビールメーカー各社がしのぎを削ってアルコールを高め合うという熾烈な競争が巻き起こった歴史が存在します。
もともとはハイアルコールビールと言えば10%前後だったものが、2005年にアメリカのサミュエル・アダムスというメーカーが「ユートピア」というアルコール度数24%のビールを発売したことから始まりました。以前IPAの記事でも紹介したスコットランドのクラフトビールメーカーBREWDOGが「戦術核ペンギン」というアルコール度数32%のビールを販売し、アイスボック競争に火が付きます。その後、ドイツ、イギリス、オランダなど欧米各国の新進気鋭のブルワリーが「我こそは」と言わんばかりにどんどんアルコール度数が高いビールを販売するようになり、ついにスネークヴェノムにより67.5%まで達することになりました。
自由市場による競争というのは恐ろしいものです。
ちなみに値段も高い
これらのハイアルコールビールですが、いずれも非常に値段が高くなっています。スネークヴェノムのブルワリーであるブリューマイスター社曰く「ふざけて飲んでアルコール中毒になる人を出さないため」だそうですが、実際のところはアイスボック製法を繰り返すことにより価格が吊り上がっていくからでしょう。
凍らせて水分を取り除くということは当然その分容量は減っていくので、アイスボック製法を用いる時には多量のビールが必要になってきます。それにより原材料費として値段は高くなります。
更にこのアイスボック製法は凍らせて水分を取り除く工程を何週間にも渡って繰り返すわけなので、その工程期間分の労働力も必要になってきます。多額な人件費もかさんでくるので更に値段は高くなっていきます。
本記事執筆時(2022年12月11日)で、スネークヴェノム(330ml)は定価で49.99ユーロ=7200円でした。(セール中だったので10ユーロ割引の39.99ユーロ=5760円)
下記にブリューマイスター社の公式サイトURLを載せておくので、ご興味のある方はどうぞ。
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