インド人はカレーを手で食べることで有名です。
私たち日本人や西洋人にとっては大きなカルチャーショックであるため、インドに旅行に行ったりすると「カレーを手で食べなきゃいけないんでしょ」と聞かれたり、その食文化のイメージは非常に根強い印象があります。
しかし最近のインド人は手を使ってカレーを食べることが減ってきています。これはごく最近になっての傾向です。
その理由はどこにあるのでしょうか。
理由は非常にわかりやすくシンプル、近代を象徴するあるものがその理由です。
なぜカレーを手で食べるのか|左手は不浄、五感で食を楽しむ
何度も言うように、インド人はカレーを手で食べることで有名です。
ヒンドゥー教では左手は不浄と見なしているため、食事で使うのは右手だけです。
また、それに加えて食事を五感で楽しむという考え方があります。左手が不浄だからというだけでなく、ポジティブな理由からも手を使ってカレーを食べています。
盛りつけられたカレーを目で見て楽しみ、実際に手で触れて口に運び、香りと味を感じながらよく噛んで飲み込み、スパイスが生み出した豊富な栄養を摂取するのです。
しかし実際にインドに行って気づくのは「みんな普通にスプーンを使ってカレーを食べている」という事実です。
もちろん手を使って食べている人もまだまだたくさんいますが、かつてのように手で食べることがスタンダードの時代ではない時代に突入したようです。
少なくともインドを訪れる外国人が手でカレーを食べなければいけないような事態にはほとんど出会わないで済みます。
インド人がカレーを手で食べない理由|インド旅行者は知っておこう
最近のインド人がカレーを手で食べなくなった最大の理由はスマートフォンの普及のためです。
カレーを手で食べると指先が油にまみれてしまい、スマホを操作しづらくなってしまうのです。
インドの食卓には「フィンガーボウル」と呼ばれる指先を洗うための道具が置いてありますが、カレーの油はそう簡単には取り除くことができません。
爪が少し伸びていればその間に入ってしまい、すぐには取れず非常に厄介な汚れになります。
そんな手でスマートフォンの画面をタップすると画面は汚れますし、タップもうまくできません。
インドはIT大国としても世界的に有名であり、多くの人たちがテクノロジーを頻繁に利用している社会でもあります。
数千年以上続いた食文化もスマートフォンの利便性によって変わりつつあるようです。
インドの歴史や文化を考えると少し寂しい気もしますが、事情を知れば納得することができるでしょう。
しかし決して絶滅する文化ではなく、まだまだ多くの人が手でカレーを食べています。
僕がインドのベンガル地方を旅行した時も、僕たち旅行者はスプーンで、現地の方は手で食べている方とスプーン利用の方々が半分ずつ程度でした。(ちなみにベンガルのカレーは物凄く美味しくておすすめなので、ベンガルとゴアのカレーについて書いた記事も、ぜひご覧ください。)
上述の五感で食を楽しむこともおすすめですし、指先で細かく味をブレンドしながら食べることが可能という側面もあるのです。もし手で食べる機会があったらトライしてみることをおすすめします。
参考文献
カレーの世界史/井上武久
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