『ムハマド・ユヌス自伝』を紹介いたします。バングラデシュの貧困層の人々に少額で無担保の融資をするという「マイクロクレジット」という事業をはじめた、ムハマド・ユヌス氏の自伝です。
ムハマド・ユヌス氏はバングラデシュ出身の経済学者で、2006年に貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献としてノーベル平和賞を受賞しました。
支援への考え方
当時は貧困層の支援というと豊かな先進国が貧しい国に対して金銭を支払って援助するというのが常識的に考えられていました。それに対して「マイクロクレジット」は少額で無担保の融資をするという、返済を義務付けて貧困層の人々の自助を促す方法で貧困を解決するところが特徴です。
金銭的な支援というのは数字としては表れるので社会から評価されることはありますが、実際の現場ではその支援を本当に必要なことに現地人が利用するとは限りません。しかし返済を義務付けられている現地の人々は融資されたお金を責任をもって事業に使用してしっかりと結果を出して返済をすることになり、それにより彼らは貧困のスパイラルから抜け出すきっかけを手に入れ、地方としても貧困問題が次々に解決されていくことになりました。
あくまで経済学を用いた仕組みとして貧困問題を解決している点がマイクロクレジットのすごいところで、それが世界中に大きな影響を与えることになったのかと思います。
支援についての現代の考え方は下記の本にも詳しく書かれています。
本書のここがすごい!
1998年に出版された当時は、まだ日本ではマイクロクレジットのことを知っている人など全くおらずに、支援についての考え方もかつての常識のままでした。そのために本書の単行本は当時全く売れずに、群馬県の田んぼの真ん中にある早川書房の倉庫の隅に保管されていたそうです。
しかし絶版とはせずに確かにしっかりと保管していたことが功を奏すことになります。ムハマド・ユヌス氏が2006年にノーベル平和賞を受賞したのです…!これをきっかけに本書はたちまち再版されて、多くの人に読まれることになりました。
最後に
今回は『ムハマド・ユヌス自伝』をご紹介いたしました。日本でも近年では東日本大震災をきっかけに多くの人が社会貢献を重視した仕事、いわゆるソーシャルビジネスの会社が物凄く増えたように感じます。ソーシャルビジネスとボランティアの社会貢献活動は本質的には同じかもしれませんが、結果への責任と行動についての認識は大きく異なっており、本書を読むことでビジネスとして社会問題を解決することの本質を深く学ぶことができました。決して甘い考えでは達成できない問題であることと同時に、経済学を用いて問題を解決し得る可能性も見える素晴らしい一冊かと思っています。
「困っている人を助けたい」という方に、その難しさと可能性をお伝えすべくぜひ一読をおすすめしたい一冊です。
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